夫の店

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MKバー備品


夫の店




私の夫は、料理人で、7年前まで和食の店を2件経営していた。

ほぼ100%手作りで、本当に美味しかった。
そこそこ人気もあった。
その影で朝早くから夜遅くまで働き詰めだった。

ちょうどたけしがお腹にいる頃、1995年に1件目、「季節料理久保田」を鹿谷町にオープンした。
まさか、たけしが生まれるとは思っていなかったので、手術やなんだかんだといろいろあった時に、彼はそれこそそれどころではなく、とにかく店を切り盛りすることで大忙しかった。

料理屋っていうのは、実に仕事が多い。
料理だけではなく、お客さんの対応、店の衛生管理など、実に手間ひまがかかる仕事だ。
大学を卒業してこの世界に入った夫は、猛スピードで修行をして、いわば我流でやってきた。
だから師匠がいない。先輩や後輩に手伝ってもらうといったこともなく、とにかく全部自分でやるしかない。
ましてや、そんなところに障害の子どもが生まれ、縁もゆかりもない浜松でやっていくということは、想像していた以上に大変だったと思う。
それでも少しづつお客さんもついて、10年目の2005年に2件目、MKバーを和合町に持つことになった。
この店は実は、レッツのために用意したものだった。

2000年に設立したレッツの3回目の、2005年の引越しは自宅だった。
レッツを自宅に持ってくるほど、いろんな意味で苦しい時代だった。
その時にレッツのために、夫が古い食堂を用意してくれた。
運良く、その後、アンサンブル江之島のプロポーザルに受かり、150平米の場所に移ることができた。
なので、レッツが和合に移ることはなかった。
そんなこともあって、ここに、もう少しカジュアルな店を作るということになった。

しかしその後、徐々に体調が悪くなり、2007年のゴールデンウイークに倒れてしまった。
その日から、仕事ができなくなった。

鹿谷の店は、夫の腕でもっていた店だったから閉めるしかなかった。
和合の店は、そのまま職員がしばらくやっていて、その後、独立して、自分の店としてオープンした。
しかし、2011年に閉めることとなった。

古いけれど、なかなか風情のある店だった。
でも、結局処分することにした。
2015年春、次の譲り手がようやく決まった。
次の方は、店ではない使い方をするようだ。そこで、いろいろな備品を処分しなくてはいけなくなった。
そこで、アルス・ノヴァの、今年度から始まった、就労継続支援B型に掃除を請け負ってもらうことにした。
レッツのために用意した店に、最後の最後でレッツが関わることになった。

自宅2階の4畳半の納戸の壁いっぱいに収納棚がしつらえてある。
ここに、季節料理久保田の食器類が収めてある。
少しづつ、いろいろな食器を揃えてきた。
時には作家さんの自宅まで伺ってお願いしたり、浜松協働学舎の根洗窯に作ってもらった食器も随分ある。
それらはどうしても処分できなくて、整理して自宅に置いてある。
今度はMKバーからいろいろなものがやってくることとなった。

そのために、もう一度全部整理し直した。連休も使って。
これ以上入るかどうか。
処分することも考えた。がやっぱりできない。
もともと、ものをあまり持つのは好きな方ではないので、不必要なものは容赦なく捨ててしまうのだが、今回はどうしては処分する気になれなかった。
夫は見るのは辛いらしい。
なのに、私はせっせと整理している。
浴槽にハイターを入れた水を張って、そこにしばらくつけてから洗うをここのところ繰り返している。

それは私なりの懺悔なのかもしれないと思う。
たけしが生まれるのと同時に夫が店を持った。私はとにかくたけしのことで頭がいっぱいだった。
その後、レッツを立ち上げた。私の興味は、2人の子どもの子育てとレッツに集中し、夫の店のことは蚊帳の外だったのは事実だ。
夫は、病気もありながら随分と頑張ったのだと思う。

今になって、あの時、もっと、やるべきことがあったのではないかと考えることがある。
どこか、何か大切な時に、私はそこに気持ちが向いていなかったのではないか。
タイミングを逃してしまったのではないかと思う。

いま夫は、私たち家族のために料理を作ってくれる。
食が細く、偏食の多いたけしの為に、毎日、工夫して、本当に立派な料理が毎日並ぶ。
本人は、当たり前にやっているけれど。すごいなあと思う。
感謝の気持ちを伝えることがなかなかできないけれど。

夫はもう店を持つことも、家族以外に作ることも嫌だそうだ。
しかし、心底勿体無いと思っている。

2度と日の目を見ないかもしれない食器や道具たち。
でも、何かの形で、日の目を見るかもしれない。
現場にいなかった私の心残り・・。

それは、「もしかしたら」のその日を秘かに願っているのかも。
どうなるかはわからないけれど。
ある意味、念を入れている気にもなってくる。
こうして、せっせと、片付けは続く・・・。



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この記事へのコメント
こんばんわ。米ナスの田楽もおいしかった。大将のかずひろさんが面白かった。店での出会いが素敵だった。日本一おいしいと思ったのはすっぽん鍋。あれ以上の旨みに出会ったことがない。
Posted by 品川和弘 at 2017年02月06日 23:14
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