地平を超える

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6月26日から、東京のアーツ千代田3331で「芸術のならず者 イタリアと日本の作家たちの対話」展が行われる。
今回イタリアと日本の障害のある作家6人に、なんと、アルス・ノヴァの高橋舞さんのガムテープシリーズが選ばれた。
とても光栄なことなのだけれど、同時に悩みを抱えることにもなった。

障害のある人の作品は今とても注目されている。
そもそも舞さんの作品を応募したのも、「どう評価されるのか」知りたかったとスタッフは言っていた。それが、びっくりするぐらい評価を受けてしまった。

有名になりたい、お金を稼ぎたい、認められたい。といった明確な目的があって、作品は世に出ていくのだと思う。
ところが、作っている本人たちに、それが確認できない場合がある。
また、彼らの作品は、日常だったり、癖だったり、こだわりだったり、どうしようもない衝動だったり、時には問題行動だったりする。
だから、いわゆる、「作品」ではない。
同時に、私たちのようなスタッフや家族や、そうした多くの人たちは、作品が彼らの何を伝えるのか、何のための作品なのか、大いに悩むのではないかと思う。これも、一般の「作品」では、考えられないことだろう。
これは、「福祉」に立脚した作り方をしているからだと思う。
実は本人たちは、自分の作り出しているものを、作品だとは思っていなくて、興味もさほどない。
だからこそ、それを世に出す周りの、スタンスが重要になる。
彼らの作品にはそうした特徴がある。

21日に、かたりのヴァでお世話になった西川先生が、レッツのあり方を議論している時に、今の世論にしても、社会運動にしても、どちらが正しいのかといった議論は結局どちらかを否定するすることになる。そうではなく、お互いの価値観や考え方を踏まえて、対話することで、全く新しい価値観が作られていくし、それが必要だとおっしゃっていた。
まさに、障害者アートもそうした対話が必要なのではないかと思う。

美術という体系や福祉という価値観を混ぜ合わせ、あるいは超えて、新しい地平を作っていく。
それによって、人としての新しい有り様が、見えてくるのではないか。
そうした世界を見てみたいと思っている。







 

芸術のならず者展

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芸術のならず者展に。


レッツは、15年間活動しています。
個人のやりたいことを創造の拠点としてとらえる、「たけし文化センター」や、誰もが利用できる「のヴぁ公民館」など、芸術・文化活動を行なっています。
そうした中で、障害福祉施設アルス・ノヴァを設立し、社会の中での障害のある人たちの位置づけを変えていく、あたらしいあり方を、生き方を追求しています。
アルス・ノヴァは設立して5年です。
高橋舞さんは、初期から通われている方ですが、ガムテープシリーズに関しては法人内で、非常に悩んでおります。

障害のある人の作品が美術の文脈で語られる時に、違和感を感じます。
それは、累々と継続されている美術作品のあり方に、彼らの作品を組み込むべきなのか。
もっと違った、今まで誰もみたこともない境界、地平に彼らの「存在」はあるのではないか。

具体的には、障害のある人の作品に込められている思いは実は本人たちではないという事実.


作りたいから作っているだけで、有名になりたいわけでも、人から認められたいわけでも、お金が稼ぎたいわけでもない。
そこに、意味も、目的もあるわけではない。
それをわれわれが世に出すときに、「芸術を超えた先」あるいは、「全く新しい領域」を、提示しなくては意味がないのではないか。
と考えています。

今回、スタッフの「試したい」という思いからポコラートに参加させていただき、イタリアと日本の6人に入れていただいたことは、大変光栄です。
しかし、「障害」が「障害」のままで、「作品はいいよね」といった評価が与えられてしまうのはあまりにももったいない。
私たちは「障害の人」存在について興味を持ってほしい。
「面白い作品をつくれる人たち」だけではなく、新しい、生き方、価値観を提示していく人たちとして。

そんな思いを抱えています。そして私たちだけではなく、様々な人たちと語り合うことで、「この境界・地平」が見えてくるといいと考えています。